サッカー基礎トレーニング4選
2025/07/09

ドリブル:~ボールを運ぶ感覚を覚える
ボールを触る足、軸足、姿勢
■トレーニング前に選手につたえたいこと
ドリブルはサッカーの中で、とても重要な動きのひとつとなります。進みたい方向にスペースがある時、そこへボールを運んだり、相手を引きつけて(おびき寄せる)から味方へパスを出すときに有効なプレーとなります。進むスピードに合わせて、ボールタッチの強弱、緩急を身に付けられると自信を持ってドリブルをすることが出来ます。スピードに乗ったドリブルで相手を置き去りにしたり、ドリブルからフェイントで相手を抜いていく醍醐味を味わうためにもまずは自分とボールとの距離感をつかみましょう。
■練習時に確認したい3つのポイント
①姿勢、特に進みたいスペースをみつけられるように、奪いに来る相手がどこにいるのかわかるように意識しましょう。
②ボールの位置、自分の感覚をつかむまでは、ボールはからだの正面にくるようにすると次の動作に移りやすくなります。正面にあると前後左右どの方向にも進むやすくなります。
③スピード、どうしてもボールを蹴って走りがちです。そうすると自分のからだは一瞬止まり、ボールだけが先に進んでしまいます。周りの状況にあわせたドリブルを心掛けましょう。始めはボールを細かく触れるように、スピードに意識が向きすぎないように、エリアを限定しながら行うと良いでしょう。
■強度を上げるポイント
徐々に人を増やしたり、エリアを広げて周囲を見ながら行うという負荷をかけていくと効果的です。ゆっくり行うことで自分のボールと奪いに来る相手との間に自分のからだを入れてキープすることもできます。慣れてきたら、ドリブルはまっすぐばかりではないため、方向を変えたり、使う足の部位を変えられると上達が早くなります。そのためにはボールを触る前に軸足で進みたい方向とは逆にステップをしてからボールを押し出したり、フェイントをかけるために相手との距離を確認することが必要となります。またドリブルの後には味方へのパスや相手ゴールへのシュートという動作が入ります。
■コーチングノート
ドリブルが単発にならないように2対1(ドリブルとパスの選択肢を持つ)や、2対2(同数の中での関係性の中でプレーを選択する)、3対2(数的優位の中で相手に的を絞らせない)など、プレー中のかかわりの中でドリブルを有効に使用できるようにしていきましょう。
ドリブルの練習を見守る際は、どうしても失敗に目が行きがちとなります。まずはボールの回転がきれいな縦回転になっているか、足のどこでボールを触るとどのようにボールが転がるのかを確認してみましょう。足の触る場所は主に、足の甲(インステップ)、足の内側(インサイド)、足の外側(アウトサイド)の3か所となります。足の甲は走るスピードを生かせる、足の内側は相手を誘うときに生かせる、足の外側は自然にボールを押し出しやすく抜き去るときに有効となります。
一緒に練習をするコーチや保護者の方が相手役となり、いろいろな方向(前後左右、斜め、後方)へドリブル出来るかなど、チャレンジしたい!と思わせながら楽しく取り組めるようにしましょう。上達の過程において、スピードを上げすぎると止まれない、方向を変えられない、周囲を見れないという状況に陥りがちです。相手との距離感がつかめるように、その場面でドリブルを使う狙いが何か、意図しながらプレーできるように、対人形式の中で行うと判断のあるプレーに加え、強度も上がります。ドリブルの習得には時間がかかります。コーチは、その選手がなぜうまくドリブルができているのか、その逆にその選手のミスが起きた場合、それが技術的な問題なのか、判断の問題なのかを見極めながら声掛けをする必要があります。よりよいものを反復して行うためにも、プレーヤーの判断を奪ってしまうコーチングにならないように気を付けましょう。
コントロール:~狙ってボールを止める
ボールを止める感覚を覚える練習
■トレーニング前に選手につたえたいこと
味方からのパスを受けて次のプレーにつなげるのがコントロールとなります。ボールのどの部分を触るとボールが弾まずに止まるのかを覚えましょう。
中心より少し上を触るとボールは止まりやすく、ボールの下を触ると浮いてしまいます。ボールが転がる軌道を見てからだの正面でボールをとらえます。その時、足の内側の広い部分でボールをコントロールすると足の接地面が大きくなり、ボールをとらえやすくなります。足の内側をボールに向け、力を抜いてボールを受け止め(コントロール)ましょう。最初は力を抜く感覚がつかみにくいため、軸足を転がるボールに合わせて柔らかく曲げ、ボールの勢いを吸収出来る感覚を身に付けていきます。
ボールを止めるのが目的ではないので、次にどこにボールを運ぶのか、必ず見てから運ぶようにしていきます。自分のからだの近くにボールを止めることを覚えると次の動作となるパスやドリブルが行いやすくなります。その時、蹴りたい足の前にボールをコントロールできると広い視野が持て、慌てずにプレーができます。相手がボールを奪いに来てもボールに寄り、動きながらコントロールをすることで相手にボールを奪われなくなります。
■上達につながる3つのポイント
①サッカーのプレー中は止まった状態でボールを受けることがほとんどないため、動いている状態でボールをコントロールする練習を行います。足首で操作をするというより進みたい方向にボールを触る足、からだを向けボールを軽く押し出しながらコントロールします。
②サッカーのプレーは自身の判断に基づき行われます。判断を下すため、ボールをコントロールするときは顔を上げて状況を把握しながら行います。サッカーのプレー中は、人(味方、相手)とボールは絶えず動いています。よって周囲の状況が把握(見えている)できているかどうかで、次のプレーに大きな差が出てきます。具体的には、ボールをコントロールしてから状況を見るのでは遅く、ボールを受ける前にプレーの判断をくだせるようにすることが目標となります。最初はボールをコントロールすることだけになってしまうかもしれませんが、徐々に積み上げていけるようにしましょう。そのために、自分の前から来るボール、次に横から来るボールを状況に合わせて(ボール同士がぶつからない)コントロールからパスが出せるようにします。じゃんけんで勝った方にボールを出す、あいこならパスを出した人に戻すというルールにすると自然に楽しくボールから目を離せます。
③ボールが自分のところに来るまでの時間を利用して、味方や相手、使えるスペースを探し、判断をもってボールをコントロールできるとより攻撃する時に効果的となります。
■コーチングノート
なぜうまくいっているのか、どうしたらうまくいくのか原因を把握しましょう。特にボールから目を離すタイミングはとても難しいものです。状況を把握しようと顔を上げて頑張るとボールをコントロールするときにボールに目を配るのが間に合わなかったり、丁寧にプレーする意識が強いとなかなかボールから目を離せなかったりします。成功した、失敗だったの結果のみにとらわれずしましょう。
コーチや保護者の方の声かけのポイントとして、ボールをコントロールする足の部位や、出来ることを増やしてあげましょう。インサイド(足の内側)でのコントロールはボールに当たる足の面が大きくなり確実に身に付けたい技術となります。アウトサイド(足の外側)でのコントロールは、相手からのプレッシャーをかいくぐったり、プレーの幅を広げるためにも有効です。サッカーの中では、転がるボールばかりではないため、浮いているボールのコントロール(ショートバウンドでおさえたり、ボールが落ちるところをコントロール)や、腿、胸、肩、頭など、ボールの高さに合わせたボールコントロールが身に付くように練習しながら、具体的に進言が出来るように努めましょう。
トレーニングに活用いただけるアイテム紹介
シュート:~狙って蹴る
ボールを狙って蹴る練習
■トレーニング前に選手につたえたいこと
得点を取るということはサッカーの中で、最大の喜びです。プレイヤーは夢中になってゴールをめがけてたくさんボールを蹴ると思います。ただシュートというと、強いキックで豪快に!をイメージされがちですが、多くのゴールは相手ゴールの近くで確実に狙われたものから生まれています。もちろん、強いキックからのゴールはサッカーの醍醐味ですが、まずは正確にどこをねらうのか、その狙ったところへボールを蹴る、ボールを浮かさずに落ち着いてシュートをすることが、たくさんのゴールを決めていくことにつながっていきます。
■練習時に確認したポイント
ボールへの入り方がまっすぐだと足の力だけに頼ることになってしまうため、からだをゴールに対して斜めに向けることで股関節を開くことが出来、正面だけではなく左右の両端を狙ってボールを蹴ることが出来ます。力だけで蹴るのではなく正確に蹴れるように心掛けましょう。コースを狙う習慣をつけるためにゴールの中にコーンを置き、そこへ正確に蹴る練習から行います。慣れてきたらGKが入り、GKの位置を見てボールを蹴れるようにしましょう。
■さらに上達や強度を上げるためには
しっかりとボールをとらえる、シュートのテクニックを身に付けるようにします。しっかり蹴らなければ入らない距離で反復していきます。このとき、成功と失敗が分かることが大事になりますし、様々なボールからのシュートをすることで試合を想定できます。またキックの種類を増やすことも大切になります。インサイドキック、インステップキック、インフロントキック、チップキックは必須のテクニックとなります。
■コーチングノート
シュートはゴールへのパスですから、正確に蹴れるインサイドキックで、GKの手が届かない隅をねらって蹴る練習から始めましょう。シュートを打つ前に、周りの状況を見て、シュートが打てると思える場面をつくります。シュート打つときの基本は、ボール(きちんとシュートのためにコントロールされているか)・ゴール(どこを狙うのか)・ボール(蹴る瞬間はきちんとボールを見る)となります。上達するにつれ、ゴール(ゴールと相手GKを見てどこを狙うのか定める)ボール(きちんとボールを見て蹴る)ゴール(蹴ったすぐ後にゴールを見るようにする)と目線を動かせるようになるとより実戦的となります。シュートを打った後には、次の動き(GKがはじいたものや、ゴールポスト、ゴールバーにあたった跳ね返りをもう一度シュートする)に備えることまで行いたいからです。
意識することとして、ますは止まったボールを蹴ることから始め、転がるボール(味方から出されたボール、自分で自分にパスを出す)を確実にミートするようにしていきます。
コーチや保護者の方は、GK役になったり、守備者役になったり、ボールを出す側に回り、その個人にあった練習を心掛けましょう。複数の相手をつけたり、複数の味方とコンビネーションで崩してからシュートを行うと、シュートのテクニックの部分がわかりにくくなってしまいます。あくまでもシュートのテクニックに焦点をあて、プレーヤー自身が考えながらシュートを狙って打つ習慣を身につけさせましょう。またシュートを打つことに対する積極性を評価するとともに、狙いに対してポジティブに具体的に褒めることが大切です。どこへシュートを打とうとしているのか、判断からの選択があるのか、ゴールの4隅に蹴れるようにボールがコントロ-ルされているのか、観察を行いながら、シュートにポイントを絞って見ていきましょう。しっかりシュートをしよう、ゴールの枠に飛ばして、などの抽象的な言い方は意欲の低下を招きますし、余計な力みに繋がりますので控えましょう。
パス:~味方とパスで協力する
ボールをパスするときの良い姿勢を身に着ける練習
■トレーニング前に選手につたえたいこと
ゴールに近づくためにパスはとても有効な手段となります。ゴールに近い味方へのパスは得点の予感があり、見ていてわくわくします。味方とパスをつなぐ楽しさを覚えるためにも、スピードを出すことよりも正確に行うことを意識します。サッカーは前方の相手ゴールを目指していくので、味方とのパスも前方へ進みながら行っていきます。ボールをパスする前にどこへパスを出すのかを確認し、ボールをパスするときには歩きながら行うことで軸足と蹴り足のリズムをつかむこと、蹴った後にすぐに次のプレーに移るための習慣付けが出来ますし、ボールを押し出す感覚が身に付けられます。徐々にスピードを上げていきますが、2人の距離が一定となるように行うのが大切です。2人の関係が横になると少し難易度が上がります。パスの出し手は進行方向とは違う方向へのパスとなるからです。ここでも2人の距離が一定となるように行います。守備者にドリブルで進むのか、パスを出すのかを読ませないことが狙いとなるからです。
■練習時に意識したいポイント
意識したいのは、パスの出し手は味方の前足にボールを送ること、パスの受け手は自分の前のスペースへボールを運ぶこと、その時に大きくならないようにコントロールをします。力みすぎると転がってくるボールとぶつかることになり、ボールが弾かれてしまいます。上達をするうえでワンタッチパス(止めないでボールをパスすること)は欠かせない技術となります。その時にも空いているスペースに蹴りすぎてしまうと味方が受け取れないため、きちんと味方の前足に出すように心掛けましょう。ここでもスピードを上げてしまうと正確性が失われやすいため、競争形式などにはせず、確実に繰り返し行えるようにしていきましょう。またサッカーの中では必ず相手がボールを奪いに来たり、進みたい方向を阻止しようとします。味方も見て相手も見てとなると慌ただしくなるため、パスを出す前に相手を見て位置を確認し味方にパスを出します。パスを出す時はしっかりボールを見て蹴ります。パスを出した後はボールから目を離し次に進むスペース、相手を確認して、次のパスを受ける準備を行います。
■さらに強度を上げるには
強度を上げるときに有効なのが、2人組が向かい合うように立ち、互いの合図でパスをしながら進み、ボールとボールをぶつけないように行うことです。どのくらいの強さでいつボールを蹴るのかというタイミング、自分にパスが転がってくるときに状況を見て一度止めてから蹴るのか、止めないで蹴るのかの判断を瞬時に行いプレーをするようになるからです。ここでもスピードが付きすぎると止まれなかったり、状況が見えなくなってしまうために要注意となります。
■コーチングノート
コーチや指導者の方は、パスの練習の時にゴールを使ってしまうとスピードが上がりすぎてしまったり、プレーが雑(大きく、強く蹴ってしまう)になるため獲得させたいものを優先して行うようにしましょう。また左右両足を使うこと(使えること)で、プレーの幅が広がりまし、選択肢が増え余裕も生まれます。コーチや保護者の方が守備側となり、不得手な足を使ったほうが早くプレーできる状況を作り出すなどの工夫ができると思います。判断の部分に言及しすぎると失敗を恐れてしまうことがありますから、トライできる雰囲気つくりに努めましょう。コーチはプレイヤーが納得できるように、理解するきっかけとなるように、声をかけていきたいものです。そのためにもパスの優先順位(シュートが打てるプレイヤーにパスを出す、できるだけゴールに近い味方へパスを出す)を理解した中でのコーチングが大切です。うまくいった要素はどこか、うまくいかない要素はどこかを見極め、対話の中から理解を求めていくようにしましょう。