私の 「feel the emotion」 ユルゲン・シュラップ氏 国際パラバレー連盟会長

私の 「feel the emotion」 ユルゲン・シュラップ氏 国際パラバレー連盟会長

私の 「feel the emotion」
ユルゲン・シュラップ氏 国際パラバレー連盟会長



「スポーツが本来持っている価値は、計り知れない」

モルテンが掲げる、ブランドの約束事である「feel the emotion」は、パラバレーボールという競技を見事なまでに象徴しています。一つひとつのサーブ、ブロック、ラリーはもちろん、日々のトレーニングキャンプや、このスピーディーな競技に新たに加わるアスリート、そして世界中でチームを支えるコミュニティのメンバー全員――。そのすべてが、スポーツによって引き出される感情を伴っているからです。

ユルゲン・シュラップ氏は、2024年パリ大会で7度目となる最後のパラリンピック出場を果たした後、障がい者のためのバレーボールの発展に尽力する国際統括団体である、国際パラバレー連盟(以下、WPV)の会長に選出されました。

現在、80カ国以上で1万5千人を超えるアスリートがプレーするシッティングバレーボール。今回モルテンはシュラップ氏とともに、この競技がいかにしてあらゆるレベルで関わるすべての人々に、喜び、悔しさ、誇り、そしてチームワークという「本物の感情」をもたらすのかを掘り下げる貴重な機会を得ました。 それでは、シュラップ氏に聞いてみましょう!

スポーツの真の価値とは何でしょうか?

健康の増進、レジリエンス(困難に打ち勝つ力)の構築、自信の醸成、そして感動を生み出すこと――。さらには、人々を結びつけ、コミュニティを築く助けとなること。これこそが、WPV会長として、一人の父親として、そして多国籍ライフサイエンス企業であるバイエル・グローバルで調達スペシャリストとして歩んできた25年のキャリアにおいて、私を日々突き動かしている原動力です。

様々な困難を得て~湧き上がる感情まで —— あなたを突き動かすものは何ですか?

7度のパラリンピック出場経験を持ち、2012年ロンドン大会での銅メダルをはじめ、世界選手権や欧州選手権でも数々のメダルを獲得してきましたが、私にとって日々のトレーニングはすべて欠かせないものです。それがあるからこそ、前進していることに心地よさと誇りを感じられますし、常に学び、向上し続けることができるのです。
もちろん試合中は、得点を決めること、そして勝つことがすべてです。そこからは溢れんばかりのエネルギーとポジティブな感情が湧き起こります。しかし、そこには常に「敗北」のリスクもあり、負ければ悔しさや挫折感を味わうことになります。こうした複雑な感情と向き合い、コントロールしていくプロセスそのものが、私にとって非常に大きな意味を持っているのです。

シッティングバレーボールを始めたきっかけは何ですか?

若い頃は、健常者のスポーツクラブでスタンディング(立位)のバレーボールをプレーしていました。当時は、シッティングバレーボールという競技が存在することすら知らなかったのです。
ところが、偶然シッティングバレーボールを体験する機会があり、すっかりその魅力に引き込まれてしまいました。ただ、一つ問題がありました。私の地元には、近くにシッティングバレーボールのチームがなかったのです。
そこで私は、高校を卒業後、ケルンからわずか20kmほどの距離にあるレバークーゼンのナショナルトレーニングセンターへ移住しようと決意しました。そこで、トップレベルの選手になるという夢、そして1996年のアトランタ・パラリンピックでデビューを果たすという夢に、全精力を注ぎ込んだのです。

スタンディング(立位)のバレーボールと比較して、シッティングバレーボールの最も難しい部分はどこだと思いますか?

スタンディングのバレーボールでは、すべての移動を「脚」で行います。そのため、腕や手は常にボールを打つために自由に使うことができます。
しかし、シッティングバレーボールでは、まず「手と腕」を使って移動しなければなりません。その上で、さらに同じ「手と腕」を使ってボールをプレーする必要があるのです。この両立こそが、最大の難関と言えます。

怪我や辛い敗北など、苦しい時期にどのようにモチベーションを維持してきたのですか?

私にとって常に鍵となってきたのは、次のゴールを明確に定めること、つまり、そこに向かって努力するための「ビジョン」を持つことでした。スポーツの素晴らしいところは、常に「次の大会」が待っていることです。そこでは、もう一度自分のパフォーマンスを発揮するチャンスが、必ず巡ってきますから。

バイエルで調達部門のリーダーとしてキャリアを築きながら、エリートアスリートとして競技を続けてこられました。信じられないほど多忙だったはずですが、どのようにしてトレーニングの時間を捻出していたのですか?

鍵となるのは「計画性」と「規律」、そして「情熱」です。これらがあればどんなに忙しくても何とかなるものです。そして何より確かなのは、これらすべてを両立させるためには、家族や職場の同僚からの手厚いサポートが不可欠だということです。

選手生活の中で、特に心に残っている試合や瞬間はありますか?

2004年アテネ・パラリンピック、ボスニア・ヘルツェゴビナとの準決勝です。フルセットまでもつれ込み、最終的に13対15で敗れた試合でした。
長年、私たちはこのチームと対戦することすら叶いませんでした。そしてようやく掴んだチャンスでしたが、結果は敗北。素晴らしい試合ができたとはいえ、その悔しさを乗り越えるのには、かなりの時間が必要でした。

現役を引退してから、日々のルーティンはどのように変わりましたか?

体育館で過ごす時間は大幅に減りましたが、今でも定期的に有酸素運動やウェイトトレーニングを行って、バランスを保つようにしています。また、以前は週末と言えばチームと一緒に合宿や遠征に出かけていましたが、今では家族と一緒に過ごせる時間が格段に増えました。

アスリートとしての経験は、あなたのキャリアにどのような影響を与えましたか?

アスリートとして必要不可欠だった「トレーニング」と「規律」は、私の大きな助けとなりました。また、スポーツを通じて学んだリーダーシップ・スキルやチームのダイナミクス(集団力学)を、そのまま直接ビジネスの世界に応用することができています。

WPVに提供させていただいているモルテンの公式試合球はどのように使われているのでしょうか?

これらのボールは、私たちにとって極めて重要なものです。シッティングバレーボールやビーチパラバレー(立位)を始めたばかりの国々への普及・発展のためにボールを提供しているほか、この夏に中国で開催される「2026 WPV シッティングバレーボール世界選手権」のようなトップレベルの大会でも使用しています。

スタンディング(立位)のバレーボールと比較して、シッティングバレーボールの最大の魅力は何だと思いますか?

一つはスピードです。コートが狭くネットも低いため、ボールに触れるまでの時間が短くなります。そのため、次に何が起こるかを予測する高度な能力が求められます。
もう一つはインクルーシブ(包摂性)であることです。シッティングバレーボールでは、障がいのある人もない人も同じスポーツで容易に競い合うことができます。これは、この競技の大きな財産です。

競技の認知度向上のために、WPVが優先的に取り組んでいる活動は何ですか?

私たちはメディア露出に非常に力を入れており、すべての大会が高いクオリティでライブ配信されるよう体制を整えています。また、視覚的な統一感の構築も進めています。
将来的には、すべての大会でコートのデザインを統一し、ひと目で私たちの競技だと認識してもらえるようにします。
そして最後になりますが、モルテンをはじめとするパートナー企業と連携し、広報活動(アウトリーチ)にも取り組んでいます。この素晴らしいスポーツをより多くの人々に広め、未来のプレーヤーを惹きつけたいと考えています。

WPVにおいて、最も困難な課題は何ですか?

現時点では、明らかに「資金調達」です。私たちはこの課題に取り組むと同時に、組織のプロフェッショナル化を進めています。この魅力あふれるスポーツが確実に秘めている成長の可能性を解き放つために、まずは強固な基盤を築こうとしているところです。

文化も価値観も異なる多様なメンバーが集まるグローバルな環境では、時に困難も生じます。そうした課題にどう向き合い、具体的にどのような戦略をとっていますか?

私はこれを「チャンス」だと捉えています。多様性があるからこそ、異なる視点や解決策が生まれ、それが私たちのムーブメント(競技の普及活動)のための新たなソリューション創出を可能にしてくれるのです。
もちろん、これが成立するのは、互いに学び合おうとする意欲があり、協力し合うことでどこからでも解決策は生み出せるという敬意(リスペクト)があってこそだと確信しています。